ほぼ「漫画家一条ゆかりの自伝」
一条ゆかり先生の漫画を読んで育った世代にとって、コミックスの合間にある「ショートエッセイ」は、本編と同じくらい(あるいはそれ以上に)楽しみな聖域でした。
あのキレ味鋭い語り口、そして浮世離れしたゴージャスな日常。
そんな「ゆかり節」に再び浸りたくて手に取ったのが、『「私の履歴書」にうっかり出たら、家の掃除をするはめに』です。
タイトルがよく分からなかったのですが、結局一条ゆかりというレジェンドの「自伝」であり、パワフルな「近況報告書」でした。
普通なら「タイトル詐欺!」なんて言われかねないところですが、そこは一条先生。
読んでいる側も「まあ、あの一条ゆかり先生だし、面白いからいいか」と納得させられてしまう不思議な説得力があります。
タイトルという型に収まりきらないエネルギーこそが、私たちの愛した一条ゆかり先生そのものなのです。
ちなみに「私の履歴書」というのは日経新聞で各界の著名人が、出生から連載時に至るまでの半生を描く『履歴書風の自伝』です。
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「バブル」という熱量を今に伝える貴重な一冊
全編を通して漂うのは、良くも悪くも圧倒的な「バブルの残り香」です。
欲しいものは手に入れ、嫌なものは嫌とはっきり言う。
今の時代、ここまで自分のプライドに忠実で、バイタリティに溢れた人は稀有かもしれません。
この本には、私たちが忘れかけていた「派手に、泥臭く、美しく生きる」ことへの執着が詰まっています。
ハチャメチャな時代が許した「劇薬」のような漫画
一条ゆかり先生の漫画や生き方は、コンプライアンスや正しさが重視される「今の時代」にはマッチしていないのかもしれません。
でも、かつてはそんなハチャメチャな漫画が許されていた、熱く、大らかな時代がありました。
整いすぎた現代のルールの中では、先生の言葉は少し強すぎる「毒」のように感じることもあるかもしれません。
けれど、その毒こそが、守りに入って小さくなっている私たちの心に火をつけてくれるのです。
中島みゆきさんとの対談は必読
1992年に「月刊カドカワ」に掲載された、歌手である中島みゆきさんとの対談が本書では再掲されています。
滅多にメディアに露出しない、中島みゆきさんの話を読めるのもレア。
30年以上の会話とは思えないくらい、新鮮な感じで読めました。
中島みゆきさんとの対談を実現されるとは、さすが漫画界の大御所、一条ゆかり先生です。
レジェンドは、今もレジェンドだった
この本は、一条ゆかり先生のこれまでの壮絶な歩みを振り返る自伝としても、今の先生が何を考えているかを知る近況報告としても、ファンにはたまらない一冊です。
「今の時代には合わない」
それは、一条ゆかり先生にとっては最高の褒め言葉かもしれません。
昔、一条ゆかり先生の漫画にときめいていた女性にオススメの1冊です。
